神遊びの夜 ―― 秋宵宴 3
「それにしても松本法眼………。お酒強いですね」
上機嫌の松本から祝い酒だと散々呑まされ、ようやく部屋に落ち着いた時は
四つをとっくに過ぎていた。
『セイに赤子が出来ていないとかなんとか。何やらとんでもない話が
聞こえた気がするんだがなぁ、組長さんよぉ?』
不犯の誓いを反故するに至った顛末を吐かせようとする未来の岳父から、
危うく酔い潰されそうになった総司は、仰のいて後ろ手をつくと畳の上で足を伸ばす。
それでも、セイとの新たな結縁を祝福され、楽しい酒だった。
「晩酌を楽しみに、ご自分で方々の蔵元まで足を伸ばすくらいの酒豪ですから。
そのうち何処かへ弟子入りして、お酒まで作り始めそうですよね」
新しい夜着と丹前を差し出しながら、セイはやわらかく微笑む。
「もう着替えてお寝みください。他行帰りでお疲れでしょう」
「これ……あなたが?」
見覚えのある丹前の模様に、総司は急いで身体を起こす。
「はい。お孝さんが局長とご自分の丹前を縫っている間、時間に余裕がありましたので。
せっかくなら先生の夜着もと」
ちょうど縫いあがっていてよかったです、とセイは再度着替えを促す。
お孝への見本としてセイが仕立てた、多色を用いた縦縞模様の丹前と、黒橡色の寝間着は、
上背のある総司によく似合った。
「ありがとうございます、神谷さん」
「いいえ。隊務の副産物で申し訳ありませんが」
着替えた衣類を甲斐甲斐しく片付け終えたセイは、総司が上掛け布団を捲るのを見届けて、
就寝の挨拶をする。
「では、私は隣の部屋におりますので」
「神谷さん」
立ち上がろうとしたセイを呼び止めると、
「もう少し、ここにいてくれませんか。貴女の顔を見るのも久しぶりだし」
布団の上に胡坐を掻いて座った総司は、含羞んだ顔でそうねだった。
「………はい」
求婚された興奮がまだ覚めやらず、内心もう少し総司の傍にいたかったセイは、
素直に頷いて布団のすぐ傍に端座する。
「今日は、本当に吃驚しました」
「はは……明日から忙しくなりますねぇ」
早く貸家も探しませんとね、と総司は呟く。
何度も総司の杯に徳利を傾ける松本からは、何はさておき、とにかく出来るだけ早く
祝言を挙げる約束をさせられた。
少々乱暴な物言いではあるが、万が一に備え、絶対にセイが前言撤回出来ないよう
周りをすべて固めてしまえ、というのが松本の本音らしい。
二人が夫婦になった事を公表して、若妻姿に改めてしまえば、
セイの『武士』への未練も断ち切れるだろう。
それに関しては、総司も異論はない。
むしろ今すぐ屯所に戻って、セイが正式に自分の伴侶となる事を、皆に吹聴して回りたいくらいだ。
そして、『口約束の念弟なら鞍替えは可能』だなんて、二度と言わせない。
だが現実的には、新しい生活には新たな支度がいろいろと必要で。
新居を決め、嫁入りの家具や着物がすべて調うまで、セイはまだ全快しない南部の世話をしながら、
この仮寓で過ごす予定だ。
祝言の細かい打ち合わせは、養父となる松本が明日の朝から総司と共に屯所へ赴き、
主君である近藤と詰める予定になっている。
幕府御典医の養女なんてとんでもない、と固辞するセイに、松本は引かなかった。
『俺の娘なら、これから先も南部の家に出入りして問題ないだろう。
その上、新選組の情報も何かと入って便利だと思うぞ。………なあ?』
同意を求められ、いつでもどうぞ、と南部も穏やかに頷いた。
かつての肩の刀傷の治療時、一月余りをこの家で過ごすうちに、南部もすっかり
セイを気に入っていただろう事が察せられる。
『それに、夫婦喧嘩の時に堂々と帰れる場所が必要だろう』
何かあった時、総司には屯所に兄分が山ほどいて、相談相手にも居場所にも事欠かないが、
セイには逃げ込める場所がない。
新選組を離れて家庭に入れば、頼れる相手はお里くらいになってしまう。
そのお里だって、『神谷清三郎の妾』の役目を解かれれば何処へでも行けるし、
いつ新たな生活を始めてもおかしくない女盛りの身だ。
『どうせ家に居ても退屈だろうから、日中は俺の元で蘭方医学を齧らせてやる』
留めにそう口説いた松本に、セイもようやく頷いた。
簡単な施術だけでも学べれば、総司に何かあった時、援けになる事が出来る。
そして、今まで自分を育ててくれた新選組の役にも立てるなら、それこそ本望だ。
「………あの、沖田先生」
「駄目ですよ。今さら嫁ぐのが嫌だなんて言わないでくださいね。
私はもう、貴女を屯所に置きたくないんです」
何かを言いかけたセイに、総司は真摯な眼差しで訴える。
「日頃どれだけの隊士が貴女を盗み見ているか、知っていますか?
私は貴女が他の男に微笑いかける度に悋気してしまうし。
土方さんや斉藤さんと親しくするのも胸がもやもやするし。
寝顔なんかもう、他の誰にも見せたくないです!」
一気に言い切って肩で息をついた総司を、頬を紅潮させたセイはただ、
唖然と見つめるしか術がない。
まさか、そんな風に思って貰えていたなんて。
そうして今まで、血迷ってセイに害為す者が出ないよう、影に日向にと、
密かに見守ってくれていたのだろう。
入隊した夜に秘密が露見した時から、ずっと。
自分はどんな時でも、総司に護られていたのだ。
そう気づいたセイは、嬉しいのと面映いのが混在して、言葉が出ない。
総司の優しさに、胸がきゅうっと苦しくなった。
「………こんな情けない男ですけど、貴女の夫として精一杯頑張りますから。
末永くよろしくお願いしますね」
含羞み顔でそう告げた総司に、セイは嬉し泣きの貌で何度も首を振る。
「いいえ。……いいえ、私の方こそ。妻として至らない点も多いと思いますが、
これから努力しますので。よろしくご指導お願いします」
手をついて頭を下げたセイに、総司は安堵の笑顔を見せたが。
「―――――それに……私は疾うに、新選組に戻る資格はなかったのかも知れません」
そのままの姿勢を崩さず、セイは重い口調で呟いた。
「何故…そう思うのですか……?」
「………口ではいつも『私は武士だ』と唱えながら、お馬が遅れていると知った時
………確かに悩みましたけれども、同時に喜んでいました」
ゆっくりと上体を起こしたセイは、もしもこの中に命が芽生えていたのなら、
と自分の腹部に手を当てる。
「……先生の赤子を産みたいと……そう、思ってしまいましたから………」
「…神谷さん―――――」
「あれだけ沖田先生や皆様のお手を煩わせておきながら。『神谷清三郎』は結局、
心の底から『武士(もののふ)』にはなれなかったんです」
目を閉じたセイの頬に、ひとすじの涙が伝う。
「この上もない士道不覚悟です。切腹する価値もない……」
膝の上に置いた拳を強く握り締めたセイを、総司はその腕の中に抱き寄せた。
「……そんなに私を喜ばせて、どうするんですか」
「…せんせい……」
幼子のように総司の背にしがみつきながら、セイはその広い胸に顔を埋める。
「貴女が私のお嫁さんになってくれるだけで嬉しいのに、赤子まで欲しいなんて」
「でも……!」
何かを言い募りかけたセイに、ねえ神谷さん、と呟いた総司は、宥めるように肉付きの薄い
その背をゆっくりと撫で擦った。
「あの村に辿り着いたのは、大和の神の悪戯だったかも知れませんが。私には、いつまでも
動けずにいる臆病な二人に与えられた、神の僥倖だと思っています」
総司の言葉に、セイはゆるく首を振る。
「………本当は先生が、誠を貫く為に女子を遠ざけていた事を、知っていました。
それでも私は、触れて欲しいと願ってしまった……!」
ずっと訊きたくて。
けれど、忘れると約束をした事で訊けなかった問いを、セイは言葉にする。
「先生はあの『神事』を、後悔されませんでしたか?」
縋るような眼差しが涙に濡れていない事に安堵しながら、総司も本心を吐露した。
「いいえ。貴女と同行していたのが、私だけでよかったと思いました。あの夜の事がなければ、
私たちは今でも互いへの恋情を秘めたまま、悶々と過ごしていたでしょう」
素晴らしい縁結びの神ですよ、と総司は微笑った。
「本来在るべき男と女の縁(えにし)を、私たちは自ら課した重い枷に囚われて、
難しく考え過ぎていたのかも知れません。
―――――だから今はただ、結縁を促してくれた神に感謝しましょう」
「…………はい……」
ようやく笑顔を見せた愛しい娘の唇に、総司は軽くくちづける。
「―――――女人に溺れる自分など、かつては想像した事もありませんでしたが………」
「…沖田先生……」
「あの夜から、私の頭の中には女子の貴女が住み着いて……。
夢現の一時たりとも忘れる事が出来なかった」
忘れろと言ったのは私なのにね、と総司は自嘲する。
真夜中の隊部屋で、眠れずにセイの寝顔をどれだけ眺めたか分からない。
ぐっすりと眠るセイは武士として己を鎧う術を持たず、女子でしかない愛らしさで総司を苦悩させた。
触れればすべてが壊れてしまう。
自分たちは、あくまで男同士でいなければ。
だが、日常には常に罠が潜んでいて。
袖捲りして洗濯するセイの二の腕。
稽古で踏み込んだ時に袴の裾から覗く脛の白さ。
胴着に籠もった熱と汗を逃そうと寛げる襟元を見れば、そこに甘く匂い立つ肌が隠されている事を、
意識せずにはいられない。
もう一度あの肢体が欲しいと、物欲しげに目がセイの全身を舐めていく。
見なければいいと警告する理性に、だが、本能がその場から逃れる事を拒絶した。
セイに心囚われて、もう何処へも行けない。
一歩も動けない。
こんなにも愚かな己は、セイという女子の存在を意識しなければ、知らずに済んだはずなのに。
この執着を昇華させる術は、たった一つ―――――。
「………いいですか、神谷さん?」
何がとまで言わずとも、総司の意図はさすがにセイにも分かる。
「でも…法眼や医師に……」
「階下まで聞こえやしませんよ」
そう嘯くと、総司はもう一度セイの唇を啄んだ。
「ねえ。いいって言ってください」
そうねだりながら吐息で耳朶をくすぐり、唇を何度も掠めさせると、
「……一度だけ……ですよ……?」
セイは拗ねた口調で、受諾の意を伝える。
「さて。それは貴女次第ですねぇ」
嬉しそうに微笑った総司は、くちづけながら優しくセイを褥に横たえた。
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松本の巧みな話術と、弟に等しい総司の決意に感涙する近藤に拠って、
二人の祝言は直近の吉日が選ばれ、五日後という運びになった。
ごく内輪での式を、という当人たちの願いは当然ながら却下され、屯所の局長室で
華々しく執り行われる事になったのは、当然の成り行きと言えよう。
加えて、伏見に潜入した折のセイの愛らしい女子姿を見た事を、密かに自慢した
監察方隊士の話がまたたく間に広まった為、屯所内は更に白熱した。
曰く、沖田先生だけのものになる前に、皆の可愛い神谷を見納めさせろ、と。
半月もの不在の挙句、そのまま新選組を離隊する事になるとは、セイ本人のみならず、
周りの隊士たちにとっても、寝耳に水な一大事だったのである。
「貴女の人気の高さが窺えますよね」
悋気を滲ませた総司の呟きに、セイはくすりと微笑う。
「今は何も慶事がありませんから、きっと皆さん、託けて騒ぎたいだけでしょう」
「おや。貴女に恋慕する男たちの存在を、私が知らないとでも思ってます?」
思いがけない問いかけに、セイは軽く目を瞠る。
中村五郎のように誰の目にもあからさまに言い寄る男は稀だが、念弟に、という申し出は、
実は度々受けていた。
でもそれは、こっそりと庭に呼び出されたり、付け文だったりしたので、
他の誰にも気づかれていないとも思っていたのだ。
朴念仁な総司がそこまで気にかけてくれていたとは、正直意外だった。
「初めてお会いした十五の時。火事の中で助けていただいたあの日から、
私は沖田先生だけをお慕いしておりましたから」
周りなど何もお気になさらず、と告げるセイに、
「貴女はちっとも自分を分かっていないから………」
総司はまだ不満気に箸を銜えた。
実際、一番隊の皆から祝福半分やっかみ半分で男泣きされた事は、
セイには内緒にしようと心に決めているが。
祝言を明らかにしてから僅か二日、隊内にいる間は隊士だろうが小者だろうが、目が合えば最後、
祝いの言葉を述べながらも『神谷清三郎』を得た男への揶揄や嫉みが引きもきらないのだ。
屯所内を歩いていても、道場で稽古をつけていても、幹部会議の時でさえ、
何処からか向けられる視線がちくちくと痛い。
こんな時、いつもちょこまかと何処かしらに顔を出して助力し、軽快に走り回っていた
セイの顔の広さがしみじみと実感される。
おまさやお孝のように、セイが新選組とは無関係の『一番隊組長の奥方』として認められるには、
まだしばらく時間を要するだろう。
総司としては、夫としてめいっぱい悋気する資格があると思わざるを得ない。
だからこそ、祝言の前に一度、隊士として最後に皆へ離隊の挨拶をしたいというセイの申し出は、
頑として許可するつもりはなかった。
加えて結婚後は、安易に屯所には近寄らないよう、改めて言い含める必要があるのは間違いない。
堂々とセイを射止めてもなお、総司の気苦労は終わりそうになかった。
「神……いえ、おセイさん。お一つどうぞ」
にこりと微笑って徳利を差し出したお孝に、
「ありがとうございます、お孝さん」
こちらも笑顔を向けたセイは、ありがたく杯を受ける。
それを見て、総司は目で合図をすると近藤と土方の元へ座を移した。
今宵は近藤が、親友と若夫婦を妾宅へ招いていた。
暮れの幹部会議が終わった時、隊部屋に戻りづらいと愚痴を零した総司を、
それならと誘い出したものだ。
実はセイの祝言の話を聞いたお孝に、是非にとねだられていた経緯もあり。
お孝と土方の間の蟠りをなくしたいと思っていた近藤の意向で、
五人だけのささやかな宴となっていた。
それでも今日は料理茶屋から取り寄せた仕出し料理が並べられ、
酒も奮発して上諸白を持ち込んでいる。
「今日はまだ女子姿ではありませんのね」
残念ですわ、と溜め息をつくお孝に、セイは苦笑いをする。
「はい。今は新しい着物を誂えていただいているところです。
それに、まだ女子姿は気恥ずかしくて」
「お住まいは決まりましたの?」
「いえ。とりあえず祝言だけ先に挙げて、しばらくは養父のところでゆっくりと支度を整える予定です」
そう告げるセイの脳裡には、花嫁本人よりも幸せそうな顔で、あれこれと嫁入り道具を選ぶ
お里の姿が浮かんでいる。
昨日、正一の留守を見計らって報告に訪れると、お里はセイの突然の吉事に驚き、
けれど我が事のように喜んで、様々な手伝いを申し出てくれた。
裕福な商家の娘たちの手習いとして、三味線や地唄を教えに赴き、いまや自力で
食べていけるようになったお里は、もう『お手当て』の心配は要らないと微笑み。
だが、山南の墓を守っている事もあり、これからも今の家に住み続けるという。
『おセイちゃんはうちの大事な家族なんよ。これからも何かあったら頼ったって』
本当なら義姉だったかも知れない女性の好意に、セイも素直に甘えるつもりでいる。
まずはお里のはんなりとした女性らしさを見習うのが、第一の課題だろうか。
「適うのなら、この醒ヶ井近辺に住んでいただけたら嬉しいわ。孝はおセイさんが大好きですもの」
後ほど旦那様にもお願いしてみます、と言いながら徳利を置いたお孝は、
そっとセイの手の上に、己の手を重ねる。
隊からの炊き出しを受け、家事の手間が少ないお孝の手はすべらかで、
太夫の頃とあまり変わらない。
「それに今度は孝が、おセイさんに教えて差し上げられます」
その眼差しの艶めかしさに、思わずセイは腰が引けてしまう。
なんだか、ひどく嫌な予感がした。
「………何を、でしょうか……」
得てして、そういう直感は当たるものである。
膝立ちになった孝は、一歩進んでセイの耳元で囁く。
「閨で旦那さまを悦ばせる為の『いろは』ですわ」
「えっ」
思わず飛び退いたセイに、うふふ、と孝は嬉しげに微笑う。
「新町で仕込まれた手練手管、すべてご伝授致しますわね」
瞬時に顔を真っ赤にしたセイは、ちらりと総司たちを盗み見る。
男達もまた、こそこそと何かを話し込んでいるらしく、お孝の言葉が聞こえた様子がないのに、
ほんの少し安堵した。
自らの枷から解き放たれた閨の総司は、まるで獣の如くで。
試衛館で鍛錬すると、もれなく『他行帰りで朝まで運動』が出来るだけの体力を
培われるものらしいと、セイに思わせた程だ。
そんな事を自分からすれば、どうなるのかは嫌でも察せられる。
出来れば、お孝の申し出を受けるのは遠慮したい。
「…そ、れは……」
「夫婦円満の為には必要な営みですわ。どうぞご遠慮なさらずに」
局長小姓の頃に眠れぬ夜を過ごす原因となった音やら声やらを思い出し、
自分には絶対に無理だとセイは内心で叫ぶ。
「いえ、あの私には」
「見目麗しい上に貞淑なおセイさんですもの。たまに『して』差し上げれば、
おねだりにもおしおきにも効果がありますわよ」
当惑するセイを知らぬ気に、例えば、とお孝は魅惑の耳語を吹き込んだ。
セイは目を白黒させつつも、その閨房術を一語一句咀嚼してしまう。
恥ずかしいし、はしたないと思う。
本来ならば武家の女子が閨に侍るのは、あくまで子を宿すのが目的であり、
快楽を享受する為ではない。
また褥の中でも、夫の為すがままなのが常だとも教わっている。
けれど、もっとも総司の傍にいられる親兵の立場を捨てて、妻になる事を選んだのだ。
愛しい男を悦ばせたい気持ちは、セイの中にも確かにあった。
「―――――これならば、沖田様にも必ずや悦んでいただける事、
この『御幸太夫』が保証致しますわ」
「………本当に、そんな……?」
話し終えたお孝の顔を間近に見つめながら、セイは思わず問い返す。
「ええ。これからまた、折々に教えて差し上げますわね」
婉然と微笑んだお孝には、数多の男達を虜にしてきた太夫の妖艶さが垣間見えた。
容貌はあまり似ていないようでも、やはりあの深雪太夫とお孝は姉妹なのだと、
セイは思わず見つめてしまう。
普段は清楚可憐な女子なのに、閨では床上手で婀娜な妓。
なるほど。
これでは近藤でなくても、一夜で陥落してしまう筈だ。
その気になった『御幸太夫』に口説かれたら、同じ女子であるセイも、下手をすれば
誘惑されてしまうかも知れない。
目を丸くしたまま黙り込んだセイに、お孝は内緒話をするように耳元に吹き込む。
「これからもまた、孝と親しくおつきあいしてくださいませ―――――ね?」
果たして―――――。
この日のお孝の囁きが、沖田夫妻の力関係にどう影響するのか。
それはまた、もう少し先のお話。
終
いつもサイトへと遊びにきてくださるto-ya様が、とっても素敵なお話をプレゼントしてくださいましたv
『神遊びの夜』・・・・・・このタイトルで書いた私の駄文。
「本来かなり艶分量が多くなるはずだったけど、方向を変えて健全表仕様にしちゃいました」とブログで語った所
「祭礼の夜に二人の間に“何かがあった”という設定で、捏造してみました」と短編を送ってくださり
その話によろめいた私が 「完全版で書いてください!」 と図々しくお願いしましたら
・・・・・・何やらトンデモナク素敵な作品が届いたのです(歓喜)
to-yaさんの書かれる総司は、私の書く黒ヒラメと違ってとても大人で優しいです。
不器用なのは同じなんですけど、男としての迷いや本能が正直で、その姿が愛しいv
そしてそこはかとなく漂う二人の艶気と、それをはるかに凌ぐ元太夫の色気が印象的。
あんな駄文が前段階にあったなんて申し訳ないぐらいに素晴らしい作品です(うっとり)
to-yaさんっ!
お忙しい中、このように幸せ一杯の作品をありがとうございました(礼)
今後とも素敵なお話を生み出してくださいませ。全力で期待してますv
ご存知の方も多いかと思いますけれど、to-yaさんはご自分のサイトこそお持ちではありませんが、
ムーさんのサイト 『Ich liebe dich』 様のGALLERYにて作品を展示されてます。
現在連載も書いてらっしゃいますので、是非足を運ばれてみてくださいませ。
ムーさんの作品はいうまでもなく、こちらには素敵な作品が満載ですよ〜v